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群衆の叡智!!!

スロビッツキーというジャーナリストが著した『みんなの意見は案外正しい』という本があります。原題はThe wisdom of Crowdsなので上記の題名は意訳ですが本当は『群衆の叡智』でしょうか。この本でのべられている事は案外非専門家の考えている論理は専門家が予想する事より正しい結果を得る事がある事実を見なければならないという所でしょうか。常識で考えればその道を究めた専門家達が出す結果というのは門外漢が予想する検討よりも正当だし、群衆という言葉が使われるときは、あまり当てにならないという表現で使われる事が多いようです。がしかし、先入観を持たずに実際におこった事をよく観察してみるとしてみるとそうではない別の世界がある事を認識させられる。--- と行った事柄を著しているのが本書です。

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)
(2009/11/25)
ジェームズ・スロウィッキー

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ーーーー
その中で一つの例として触れられている話に1986年に発生したスペースシャトルチャレンジャー号の事故の一報が及ぼした興味ある株価変動について述べられています。

この件はMichael T. MaloneyとJ Harold Mulherin の共著による"The complexity of price discovery in an efficient market: the stock market reaction to the Challenger crash"という論文にもまとめられています。(Journal of Corporate Financeの2003年版453-479ページ) 以下この論文にしたがって考察を進めていきたいと思います。
スクリーンショット(2010-12-07 19.45.22)
論文の一部

事の始まりは…1986年1月28日、午前11時39分、スペースシャトルチャレンジャー号は打ち上げ直後ブースターの爆発により空中分解し乗組員全員が死亡した事故直後の株式市場。この事故は実況中継で全ての人々が見ている前で発生したもので、情報はすぐに広がりました。打ち上げ時期に無理があったとの話もあります。

その背景には...

当時レーガン大統領が年頭の教書演説のなかでチャレンジャー号に搭乗した女性教師マコーリフ先生の話をするという計画もあったようです。もともとレーガン大統領は教育に熱心でないと言われていたのを挽回するための演出だったのでしょうか。また予算の問題を抱えていたNASAの事情でこのスペースシャトルはどうしても予定通り打ち上げを迫られたという事情も伝えられています。

740px-Challenger_explosion.jpg
チャレンジャーの事故の写真

さて事故直後の株式市場で、スペースシャトル計画の主要4銘柄の株価が下がり始めます。
その4社とは、
ロッキード (Lockheed): 地上支援
マーチンマリエッタ(Martin Marietta):シャトルの外部燃料タンク
ロックウエル (Rockwell International):シャトルとメインのエンジン
モートンサイオコール (Morton Thiokol):固体燃料ブースター
です。

最初は4社とも価格を下げたのですが、同日中にロッキード、マーチンマレッタ。ロックウエルの3社の株は持ち直しましたが、ティオコールの株価だけは下がり方がひどかったようです。とくにティオコール株は12時44分に取引停止状態になってしまいました。(下グラフ参照)

Fig 1
株価グラフ 1月28日

打ち上げの日は気温が相当低い状況にありました。実はその後設立された事故究明委員会で1986年2月11日にノーベル物理学賞に輝いたアメリカの物理学者リチャードファインマンがO-リング(一種の合成ゴムを原料とするO字型のシール)は低温においてそのシール特性が劣化する特性がある事を簡単なデモで明らかにしました。それが原因でブースターの燃料漏れがおこり、発火爆発した事が結論付けられました。しかしこの結論は事故から1ヶ月以上も立ったとこの話。事故の直後にその原因であるO-リングシールを使っていたブースターを担当したサイオコール社の株価がほかの3社と比べても異常な動きをしたのです….まだ何の情報ももたらせていない時間帯に。

feynman.jpg
ファインマン写真
リチャード・ファインマン(1918-1988: 1965年ノーベル物理学賞を朝永振一郎、シュウインガーとともに受賞)

この事故の顛末は『困ります、ファインマンさん』(岩波現代文庫)にファインマン先生の言葉で収録されています。
困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)
(2001/01/16)
R.P. ファインマン

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一般公開による事故聴取の席上、O-リングのサンプルを氷水に漬けるミニ実験をおこない、一般の人々にわかりやすい形でオーリングの低温での硬化現象のでもを行いました。ファインマン先生は政治に絡むのが嫌だったそうですが、何かと穏便に片付けようとする委員会に反抗するために聴衆の面前でこのようなデモをおこなったという逸話もあります。事故調査を通じてNASAのマネージャー達にインタヴューした際に彼はNASAの信頼性に関する考察は間違っている事を見抜き事故報告書にそれを述べようとしました。しかし事を穏便に済ませたい事故調査委員会の意向により報告書にその見解を入れないという圧力があったのですが、ファインマン先生はそれを断り付録に彼の主張を入れるように委員会に受諾させました。それは以下のコメントで結論づけられています。(原文のまま:For a successful technology, reality must take precedence over public relations, for Nature cannot be fooled.)全文は下記のNASAサイトで見ることができます。→ファインマン個人的見解
NASAのようなアメリカの機関のすごい所は自身の問題点を指摘したこのファインマンの見解を自分のサイトに収録して公開している事です。

下記の映像はファインマンが述べている事故の状況です。デモの様子やその後の事故調査委員会報告の顛末などが述べられています。


さて本論に戻って、この事象はいったいどう理解する事ができるか?を分析したのが上記の論文です。
4社の銘柄の株価が下がるのは理解できますね。全体的にチャレンジャー事故がそれ添えの会社に及ぼす将来価値が減少する事が見込まれる為にその価値が下がるからですね。それではなぜその中の一社の株が多く売られたのでしょうか?

まえもって事故の直後に原因となるような情報を誰かがつかんで株を売り始めたのか?本論文ではそのような事が無かった、またサイオコール社の役員や機密を知り売る人がインサイダー取引をしたのか?これも無かったようです。

もし私が投資家だったら次のような考えを巡らせるかもしれません。この事故によってシャトルのプロジェクトは相当遅れるであろう。NASAも予算獲得が立場上難しくなる。したがってこのプロジェクトに参加している4社は将来におけるビジネス機会を失う。つまり展開が不確かになるので手持ちの株を売り渡そう。またサイオコール社はNASAの依存度が高いので今後に事業は大きな問題が出るのではないか?

論文はこの点についても論及しており、次のような考察を広げています。
レーガン大統領はこの事故の後も計画を続けると行っている。また各社がこのプロジェクトに関わる全売上の比率はロッキードが8.3%、マーチンマリエッタが10.95%、ロックウエルが11.86%で問題のサイオコールは18.23%であった。たしかにサイオコール社のNASAへの依存度は相対的に大きいけれども株価の下落はその比から見てもサイオコール社のみが異常に高かったのです。28日の終値はサイオコールが12%も下落したのに対してその他の会社は1-4%止まりだったのです。(上記の株価グラフ)。

政府関連の仕事に対するリスクは、サイオコール社が全売上の40%でロッキードに至っては83%もの関連事業が会ったので、このリスクは事故後の株価下落には全く効いていないことになりますね。ゆえに一般投資家が考えるような事はこの1日では発生していないことになります。この12%はサイオコールの資産が2億ドル消えたのと同じで、実は事故調査委員会がサイオコール社のシールが原因であると結論づけたのち実際にサイオコール社が被った損害額とまさしく同じぐらいであったのは運命の皮肉としか言いようがありません。

この事故原因とおもわれる問題は実はサイオコール社内では一部分かっていたようです。技術者がO-リング特性の低温下での劣化を知っていて、1月29日のケープカナベラル基地は気温が氷点下のような状態であったので打ち上げを延期するように具申したという事実はあります。しかしこれが一般投資家やその他市場関係者が知りうることになったとは考えにくいと推察しています。そのときの報道では事故の原因は不明という事が公の情報であったのです。本論文からはずれますが、この話は別の意味で技術者の倫理観という観点から論議される内容になっています。

常識で考えれば、新聞報道やウオール街の狂乱によって株価が乱高下するという事はままあります。まことしやかなデマとかうわさ話等が株価の動きに影響を受けることがあるでしょう。しかしこの場合は全くそのような兆候を見ることができなかったのです。市場の取引はこの4銘柄をのぞくと全くいつものように行われていたし(ダウ平均も変化なし)、サイオコール社以外の3銘柄はその日のうちにほぼ正常の取引に戻ったのです。

限られた情報をもとに判断した個々の投資家は色々判断したのでしょうが、集合的な結論がサイオコール社の株を持っていたくないという古都になったとしか考えられないというのが本論文の行き着いた結果だったのです。

かれらの結論は『株式市場の株価変動の急峻且つ正確な動きをほぼ間違いなく論証したけれども、このような場合の株価変動が何に起因したのかよく検知できなかった』というものでした。(原著では下記のように述べられています。Although we document what are arguably quick and accurate movements of the market, we are unable to detect the actual manner in which particular informed traders induced price discovery. )

ーーーー
上記のようなCase Studyを通じてスロビッツキーはWisdom of Crowdsにて、集団の振る舞いが案外間違いなく機能する要素として
1)意見の多様性(突拍子も無い考えから穏便な考え方に渡る私的情報を持っている)
2)独立性 (各自の意見が谷あまり影響を受けなく独立性を保っている: 集団ヒステリーを起こしにくい)
3)分散性 (未時価な情報に特化してそれを利用できる)
4)集約性(個々の情報を集計して集団として一つの判断ができるシステムがある。)
をあげています。



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